2019-07-18(Thu)

葉真中顕「Blue ブルー」/東川篤哉「ハッピーアワーは終わらない かがやき荘西荻探偵局」

こんばんは。昨日今日と、少しだけ晴れ間が覗きましたが、相変わらず毎日
ぱっとしない梅雨空が続いてますね。その上台風まで襲来する始末だし。
また西日本に大雨が降るかもしれないとのことですし、被害がないことを
祈ります。


読了本は二冊。また性懲りもなく予約本ラッシュがやってきそうで、
戦々恐々としております。今月は人気作家の新刊ラッシュだったからなぁ。
発売日に予約して一番手~二番手で回って来てくれるのは嬉しいのだけれど・・・。
伊坂さん、宮部さん、東野さんの新刊が一気に回ってくるもよう。
その前に池井戸さんのが回って来ているし。意地でも読み切らなくては。


葉真中顕「Blue ブルー」(光文社)
葉真中さんの最新長編。先に述べたように予約本ラッシュ中でして、結構分厚いので
借りたはいいものの、スルーしようか若干迷ったんですが、読み始めてみたら
やっぱりリーダビリティがあるので、最後まで読まずにはいられませんでした。
平成の初日に産まれ、平成が終わる日に人生を終えたブルーという青年を軸に、
平成の世に蔓延る様々な社会の闇を描いたクライムノベルです。冒頭に衝撃的な
一家惨殺事件が起きるところから物語は始まります。平成一六年のクリスマスの
翌日、青梅市の一軒家で発見された死体は5つ。この家に住む夫婦二人と、次女、
そして離婚して出戻った長女とその5歳の息子。警察の捜査の末、事件は引きこもり
だったという次女による犯行として、被疑者死亡で幕を下ろした。なぜなら、
次女だけが死亡推定時刻が半日もずれており、お風呂場で薬物を服んだ上で
心臓麻痺を起こしたものだったことに加え、犯行に使用されたと思しき包丁にも
次女の指紋がついていたからである。
しかし、事件を担当した藤崎は、捜査の過程で次女が引きこもりではなかった
という情報を得る。更に捜査を進めると、彼女に子供がいたことが判明し、
被害者の爪に犯人と目される次女のものではない皮膚が残されていたこともあり、
犯行当時、現場にはもうひとりの人物がいたのではないかと思い始める。
しかし、ある事情により、事件の捜査はそのまま打ち切られてしまい、藤崎は
警察官でいることに虚しさを覚え始める。そのまま結局気持ちが回復することはなく、
数年後、ある決意を秘めて警察を退職してしまう。
そして平成が終わる間際の四月、東京多摩市のD団地で、身元不明の男女の死体が
発見された。二つの事件の繋がりとは――。
無戸籍児童、児童虐待、外国人労働者問題、児童ポルノ――平成で話題になった
社会の闇問題がこれでもかと出て来て、気が滅入る場面が多かったです。合間に
ちょこちょこ挟まる平成の出来事やヒットソングなどは懐かしい気持ちになれ
ましたけれど。現実の出来事とフィクションを上手く混在させて、リアリティのある
物語に仕上がっていると思います。
ブルーという少年の身の上には同情すべき点がとても多い。母親があんなだと、
子供はただただ悲惨な人生を歩まざるを得なくなってしまう。ブルーの母親の
言動には、ただただ嫌悪と怒りしか覚えなかった。自分の子供に対して、なぜ
あんなことができるのか。でも、どんなに酷い母親でも、やっぱり子供にとっては
無条件に愛する存在なんですよね。母親にどんなに邪険にされてもめげずに
母の愛を求めてすがりつく、ブルーの健気さが可哀想でならなかったです。
とても読み応えはあったのですが、クライマックスにはもう一捻り欲しかったなぁ。
事件の真相はほぼ思った通りだったし、冒頭のブルーに関する記述も、なにか
最後にドンデン返しがあるのではと期待していただけに、特に何の仕掛けも
なかったことで拍子抜け。『絶叫』の時のような、カタストロフが感じられ
なかったので、ちょっと残念だった。葉真中さんには、やっぱり最後であっと
言わせてもらいたいと思ってしまうので(この辺り、私の中では道尾さんと
同じようなタイプの作家と言えるかも)。
最後の最後まで救いがなかったのが悲しかった。ブルーの人生って一体何だった
のだろうか。せめて、十数年気心が知れた仲間と一緒に穏やかに暮らせたこと
が救いといえば救いなのかな。もっと、ブルーの内面を知りたかったです。
エピローグで、語り手の人物はブルーを憎んでいないけれど、もうひとりの方
は憎んでいると書かれていたのが意外でした。逆ならわかるのだけれど。
親にあれだけの酷い虐待を受けていたのは、もうひとりの人物の方だったのに。
それでも、やっぱり親は親なんでしょうかね・・・感謝してもいいくらいだと
思ってしまうのは、やっぱり当事者じゃないからなんだろうな。
平成十六年の一家惨殺事件の後で樺島香織に引き取られたブルーが、どうやって
生きていたのかが気になります。戸籍がないから学校もいけないだろうし。
学校に行っていない子供がいたら、周りに通報されたりしないのかな、とか
気になる点はいくつもありますけど。香織ならその辺、うまくやっていたの
かもしれないですけどね。ブルーがそのまま、ひねくれずに育ったのは、
香織のおかげなんでしょうね。そのまま、香織と友人のマルコスと穏やかに
暮らしていけたら良かったのにな・・・。
ブルーは重い犯罪を犯した犯罪者ですが、ベトナム人のリエンにとっては間違いなく、
救世主だったと思います。彼女にとって、最後までブルーが『いい人』のまま
だったのは救いに思えました。
格差社会の闇を浮き彫りにする力作だったのは間違いないと思います。
気が滅入る描写もたくさんありましたが、いろいろと考えさせられる作品でした。


東川篤哉「ハッピーアワーは終わらない かがやき荘西荻探偵局」(新潮社)
東川さん最新作。かがやき荘の貧乏アラサー女子三人組が探偵役を担うシリーズ
第二弾です。といっても、読み始めるまですっかりシリーズものだったことを
忘れていましたけど。読み進めて、そういえば、このアラサー女子たちのお話
前に読んだよなぁと思い出した次第。
作風はいつも通りのユーモア本格ミステリ。女子三人組のキャラがアホでいいですね
(褒めてますよw)。ツッコミ所も満載だけど、トリックは今回も面白かったです。
ただ、三話目のありふれた密室のトリックには拍子抜けでしたけど。ありふれ過ぎ
だろッとツッコミを入れたくなりました・・・って、完全にそのツッコミを狙って書かれて
いる気がしますね、コレ。そうだとしたら、東川さんの狙い勝ちと云えるのかも。
葵のトリック解説の前に披露された美緒の推理にもツッコミは入れたくなりましたけどw
トリック的には、二話目のビルの谷間のやつが一番面白かったかな。犯人は意外性
ゼロだったけど(苦笑)。礼菜が倒れた理由にも納得が行きましたし。
他の二編、一話目の若きエリートが殺された作品に関しては、被害者が裸にされた
理由自体には、なんとなく予想がつきました。こういう性癖を持った人間、最近は
結構多いらしいですしね。
四話目の奪われたマントの話は、礼菜が特撮イベントに参加した後で被害に遭った
というところがポイントですよね。同じような特殊な格好してる女子がいっぱい
集まってそうですし。葵の推理を読んで、なるほど、と思いましたね。
しかし、礼菜は二回も犯罪に巻き込まれて病院のお世話になっているのに、
なぜ身内の人はお見舞いに来ないんでしょうか。四話目の場合は最初に方界院家に
連絡が行くのは仕方ないとは思うけど(礼菜が言ったことだから)。何か実家に
連絡したくない理由でもあるんですかねぇ。入院するほどの状態だったら、
家族に連絡してもいいと思うんだけどなぁ。
それにしてもこの三人、それぞれにアルバイトとかして働いてる筈なのに、家賃
毎回滞納しすぎだと思うんですが。多分、働いてるお金、全部お酒に変わって
るんだろうなぁ・・・。こんな状態じゃ、三人とも、結婚とか絶対無理でしょうね^^;
大家が心の広い(?)法子さんで良かったのかも。
よく考えたら、東川さんって、大富豪を作品に登場させるの好きですよねぇ。
本書もだけど、『謎解きはディナーの後で』もそうだし、『探偵少女アリサ』シリーズも
そうですよね。まぁ、お金持ちだといろいろ設定に都合がいいことが多いんだろうな。
本書はまさに、方界院の家の威光で、警察の横槍を阻止したりしてるしね。法子さん
のキャラもいいですね。やりたい放題のわがままマダムだけど、かがやき荘のアラサー
三人組には結構情けをかけてやったりしてるし。見習い秘書の啓介は振り回されて
ちょっと可哀想ですけどね(笑)。
東川さんらしいユーモアミステリで楽しめました。
スポンサーサイト



2019-07-13(Sat)

梨木香歩/「椿宿の辺りに」/朝日新聞出版刊


梨木香歩さんの「椿宿の辺りに」。

皮膚科学研究員の佐田山幸彦は三十肩と鬱で、従妹の海子は階段から落ち、ともに痛みで難儀
している。
なぜ自分たちだけこんな目に遭うのか。
外祖母・早百合の夢枕に立った祖父から、「稲荷に油揚げを……」の伝言を託され、山幸彦は、
鍼灸師のふたごの片われを伴い、祖先の地である椿宿へと向かう。
屋敷の中庭には稲荷の祠、屋根裏には曽祖父の書きつけ「f植物園の巣穴に入りて」、
明治以来四世代にわたって佐田家が住まいした屋敷には、かつて藩主の兄弟葛藤による惨劇も
あった。
『古事記』の海幸山幸物語に3人目の宙幸彦が加わり、事態は神話の深層へと展開していく。
歯痛から始まった『f植物園の巣穴』の姉妹編(紹介文抜粋)。


久しぶりの梨木さん。図書館の新刊情報ページの紹介文を読んだら、以前に読んだ
『f植物園の巣穴』の続編みたいなことが書かれていたので、これは読まねば!と思い
予約した次第。厳密に言えば、純粋な続編とは違いましたけれど(時代が違うので、
『f植物園~』に出て来た人物はすでに故人となっており、名前だけの登場でした)。
というよりも、『f植物園~』自体が作中作の扱いになっているので、あの作品は
作中人物によって書かれた書物だった(フィクション、ノンフィクション如何はともかく)
という設定になっているようです。実は、主人公も全然違う人物だし(血縁関係はあるけど)、
登場人物も全く重複していないので、途中まで二つの作品の繋がりが全くわからなかった
のです。途中で『f植物園~』と曽祖父の話が出て来て、やっと両者の関係性がわかって、
なるほどー!って感じでした。
まぁ、直接の繋がりはほとんどないので、『f植物園~』を読んでなくても
特に問題はないです。読んだとはいえ、私も内容全然覚えてなかったし(相変わらず・・・)。
本書よりあちらの方がファンタジー色は強かったですね。山幸彦の曽祖父による創作物
だったと思えば、納得もできるような。
ただ、本書も不思議な話であるのは間違いなく、梨木ワールド全開って感じ。
主人公は、化粧品メーカーの研究所に勤める佐田山幸彦(さた・やまさちひこ)。
三十代にも関わらず、四十肩が酷くなり、日々の生活に支障がでるようになって
しまう。その話を従姉妹の海幸比子(海子)に告げたところ、彼女もまた、身体中の
痛みを伴う難病で苦しんでいた。二人の名前は、神話の海幸彦山幸彦に触発された、
今はもう亡き祖父によってつけられた。痛みで苦しむ二人が、ある日寝たきりの
祖母の早百合を見舞いに赴くと、寝ている彼女の夢枕に立った祖父から、『稲荷に油揚げを』
告げられたと言う。それを聞いた山幸彦は、海子から紹介された鍼灸師の双子の片割れ・
亀シを連れて祖先の地・椿宿に向かい、誰も訪れなくなった稲荷に油揚げをお供えしに
行くことに。その地には、山幸彦たちを襲う痛みの原因が隠されていた。かつて椿宿の
お屋敷で起きた惨劇とは――。
全身の痛みで苦しんでいる割に、二人のキャラのせいか、山幸彦も海子もそんなに悲痛な
感じがしない。いや、痛みの度合いは相当酷いものだし、山幸彦なんか鬱も発症しているしで、
二人ともなかなかに悲惨な状況ではあるのですけども。でも、二人の関係や会話のやり取りも
独特で、コミカルな印象さえ受けてしまいました。
亀シのキャラも面白くて、彼女と山幸彦の会話にはついつい、くすりと笑える可笑しさが
ありました。物語は過去の土地の因縁なんかが絡んで、神話の壮大さも加わって、
なかなかにスケールの大きなお話なのだけれど、どこか独特のユーモアがあるので、
あまり肩肘張らずに入って行けました。梨木さんの文章やキャラ造形の上手さのおかげも
あるかも。
二人の痛みの真相は、正直いまいちよく消化出来ていない部分も多いのですけども。
祖先の因縁や、噴火や洪水による治水の歪みなんかが原因で、無関係な子孫の身体に
痛みが出るなんて、子孫にしてみればたまったものじゃないですよね。
仮縫鍼灸院の亀シの、先を見通せるような不思議な能力にちゃんと理由があったところは、
拍子抜けしたともいえるし、腑に落ちるとも言えました。本当に千里眼なのかと思って
たんで、がっかりした感じも強かったけど。でも、憎めないキャラですよね。
最後に、宙幸彦と山幸彦の往復書簡で終わっているところが憎いですね。宙幸彦の
手紙でいろんなことが判明する訳ですが。スケールが大きすぎて、何が何やらって
感じもありましたけど(アホ^^;)。
最後に、海子のその後や、宙幸彦の子供が無事産まれたことがわかったのも良かったです。
子供の名前が気になるなぁ。そして、海子には遠い地で幸せになってほしいですね。
めくるめく梨木ワールドをたっぷり堪能できる一作だと思います。ファンならきっと
とても楽しめる作品じゃないかな。

2019-07-08(Mon)

加藤実秋「メゾン・ド・ポリス2 退職刑事とエリート警視」「メゾン・ド・ポリス3 退職刑事とテロリスト」

こんばんは。梅雨空が続きますね。今年は梅雨らしい梅雨の天気って感じがします。
最近から梅雨の年も結構ありましたからねぇ。梅雨明けもいつもより遅くなりそうですし。
九州の豪雨で野菜の高騰が心配・・・。夏野菜の季節なのになぁ。


今日も二冊ご紹介。

加藤実秋「メゾン・ド・ポリス2 退職刑事とエリート警視」(角川文庫)
ドラマ化されたのを機に読み逃していた2巻を予約し、ちょっと時期をはずして
新刊の3巻を予約。先に3巻が回って来てしまうという悲劇があったものの、
3巻は予約延長が出来たので延長している間に2巻が回って来て、無事順番通りに
読むことが出来ました(説明わかりづらっ)。
ドラマは結構ハマって観ていたので、各キャラクターのビジュアルはそのまんま
ドラマの配役通りをイメージして読んでしまいました。主人公のひよりと高畑充希
ちゃんはイメージぴったりって感じ。夏目の西島さんは原作ではもうちょっと年
行ってるイメージですけど。
今回も、メゾン・ド・ポリスのおじさんたちは、さまざまな事件に出張って大活躍。
退職したとはいえ、現職時代は優秀な警察官たちばかりですから、それぞれの
得意分野を駆使して事件解決に奔走します。ひよりとの関係も、前作よりも
よくなっている感じがしますね。いくつかの事件を一緒に解決したことによって、
ひよりの、おじさんたちに対する評価も大分変わったようです。今回、最終話では
ひよりの父親に関する事件も共に解決に乗り出します。父親の事件の真相自体は
意外なものではなかったけれど、父親の失踪後の身の上にはちょっと驚かされました。
いくら家族の為とはいえ、11年間も姿を見せずに一人でひっそりと生きて来たとは。
今回は元警視庁の科捜研にいた藤堂の元妻で、現監察係の杉岡も登場。元妻に猛烈
アプローチをする藤堂を、クールに袖にする杉岡との掛け合いも楽しかったです。
まぁ、こんなに女にだらしない夫だったら、三行半突きつけられても文句は言えない
だろうなぁ。ただ、その杉岡自身も不倫の末奪った立場だったというから、こっちは
こっちで問題アリとも云えるけども。
とはいえ、科捜研にいたころの藤堂が相当優秀だったのは、今回の事件でも随所で感じられ
ましたね。藤堂の現場での捜査のやり方を読んでいると、事件の捜査には科学的な考察
というのもとても大事なんだなぁというのがよくわかります。現場に残された血痕
ひとつをとっても、その形状によっていろんな呼び方があるというのも初めて知り、
勉強になりました。
もちろん、夏目さんの鋭い観察眼にも感心しましたけど。事件について集中して
考えたい時にアイロンをかけ始めるところが面白いですね。これはドラマでも
反映されてましたけど。西島さんが白シャツ着て真剣な顔でアイロンかけてる
姿には萌えました・・・むふ。
ひより行きつけのバーの店主・草介と夏目で揺れ動くひよりの女心の部分も
今後どうなって行くのやら。草介には何か裏がありそうな感じもするんです
けどね~。個人的には、夏目といい感じになって欲しいですけどね。バーの
常連ナナとひよりの、草介を巡るバトルも面白いですが。まぁ、ナナはひよりと
やり合うこと自体を楽しんでいるだけで、草介に本気になっているとは
思えないですけど。彼女の、酔っ払うといろんな方言が出て来るところが好きだなぁ。


加藤実秋「メゾン・ド・ポリス3 退職刑事とテロリスト」(角川文庫)
というわけで、続けて3巻を読みました。知らない間に2巻が出ていて、予約
しそこねていた訳ですが、ラストの解説を読んだところ、2巻と3巻の間は4ヶ月
しか空いてなかったらしい。ドラマ化に合わせて、刊行スピードを早めたのでしょうね。
図書館入荷ももしかしたら同じ時期だったのかも(文庫だから入荷自体単行本より
遅いと思うし)。
今回は、シリーズ初の長編。ひよりとメゾン・ド・ポリスのおじさんたちは、
爆弾テロリストと相対することに。長編だけに、事件のスケールが大きくなってますね。
テロを相手にするって辺り、似鳥さんの戦力外捜査官シリーズを思い出しちゃい
ましたけど。
今回の犯人たちのテロの理由には唖然。あまりの身勝手な考え方に、ちょっと
ついていけなかったです。こんな理由でテロを起こしたからって、日本だけじゃなく
全世界に水族館はあるし、何も変わるわけがないのに。驚いたのは、その理解不能の
思考回路を持つ犯人に、賛同者が何人もいたことです。テロを起こして大惨事を
引き起こしたら、犠牲になる人だってたくさん出る筈なのに。宗教めいた洗脳
でもしたんだろうか。全く、理解出来なかった。唯一の救いは、迫田さんの息子、
保仁のことですね。何を考えているのかわからないところはあるけれど、悪い人
ではなさそうだと思っていたものの、ああいう展開になって、彼はどう絡んで来るん
だろう、と心配していたので。迫田さんとの関係も更に悪いものに変わってしまう
のだろうか、とか。まぁ、その辺りは杞憂に終わってほっとしましたけどね。
それにしても、ラストのひよりの行動にはひやひやさせられました。すごい勇気
ですよね。私なら絶対無理だ~~^^;;夏目さんの心配っぷりにはちょっとニヤニヤ
しちゃいましたけど。やっぱり、この二人はいい雰囲気になって行くのかな?
バーの店主、草介さんの意味深なバーの休業も気になりますけど。終盤で休業の理由を
本人が話していたけど、なんだか、どこまで信じていいのかって感じだし。ひよりを
イメージしたカクテルって、一体どんな味だったんだろうか。草介さんって、やっぱり
何か裏がありそうな感じするんですよねぇ。一体何者なんだろう。ドラマだと、全然
設定が違うキャラで登場していたんですよね(名前だけ一緒)。それとリンクして
いたとしたら、結構な裏がある筈なんだけどね。
まだまだシリーズは続くみたいなので、今後の展開を楽しみにしていたいと思います。

2019-07-03(Wed)

三津田信三「白魔の塔」/京極夏彦「今昔百鬼拾遺 河童」

こんばんは。九州地方の豪雨、心配ですね。熊本なんか、地震の被害だって
大きかった場所なのに。降らない年はまったく降らなかったりするのに、
今年の梅雨は異常ですね・・・ここ数年の異常気象は一体どうなっているんでしょう。
ついつい何かの前触れではないかと思って戦々恐々としてしまう。
とにかく、被害が大きくならないことを祈るのみです。


今回も二冊です。

三津田信三「白魔の塔」(文藝春秋)
まさかの物理波矢多シリーズ第二弾。っていうか、読んでいてどうもこの変わった
名前に覚えがあるなぁと思って調べてみたら、一作目があることに気づいたって
感じだったんですけど^^;一作目のことは漠然としか覚えてなくて、自分の
記事読み返して、そういえば炭鉱の話あったあった!と思い出したという。
しかし、一作目で炭鉱の仕事をしていたかと思えば、本作ではなぜか灯台守
になっているという、不思議な展開。その間にも過酷な職場を転々としたらしい。
変わった経歴の青年ですよねぇ。しかも、灯台守の仕事も本書のみで、次はまた
違う仕事を探すらしいし。戦後の混乱した世の中では別段珍しくもないのかも
しれませんけどね。
灯台守の仕事自体は興味深かったのですが、いかんせん、波矢多が新しい
赴任先の轟ケ埼灯台に到着するまでの描写が長くて、更にその先の灯台長夫婦の
思い出話がまたやたらと長く続いて、中だるみ感がすごかった。一体いつに
なったら本題に入るのかなぁと思っていたら、最後にその二つの体験談から
一気にミステリ的な考察に入って、面食らわされました。波矢多や灯台長の
孝蔵が体験した白い怪異の体験が、波矢多によって論理的に解明されるくだり
は、素直に感心しましたし、きちんと納得がいくものでした。孝蔵の奥さんの
正体には驚かされましたね~。彼らの娘・花実の奇禍にはショックを受けましたが、
その後の彼女の身の上に関しては少しほっとできるところもありました。
ただ、今後の波矢多の身の上の方は心配になりましたが・・・^^;今で言ったら
ストーカー状態になりかねないですよね・・・大丈夫かな^^;
白もんこの正体も意外でしたね。行動は気味悪いけど、なんとなくその姿を
想像すると、愛嬌があってゆるキャラみたいでちょっと可愛らしく思えて
しまった(多分、いろいろ間違っていると思うがw)。
最後の謎解き部分が面白かったから読んで良かったと思えたけど、途中
もうちょっとテンポ良く書いてほしかったなぁ。読んでも読んでも終わらない
地獄だったよ・・・。
灯台守の仕事にあれだけ強い使命感と責任感を持って従事していた波矢多
だったので、身体的事情から仕方がないとはいえ、最後の決断は意外でした。
次はどこへ行くのかな。
どんな仕事をしても、真面目な波矢多ならやって行けると思うけれどね。



京極夏彦「今昔百鬼拾遺 河童」(角川文庫)
三ヶ月連続刊行の第二弾。第三弾の『天狗』は昨日予約してきました(今日HP
確認したら三番目でした)。今回はのっけから品のないお話で盛り上がる女子高生
の会話で始まります。お嬢様女子高生の会話に微妙についていけない美由紀ちゃんが
可笑しかった。ついていけない割に、意外とちょこちょこツッコミ入れるところも
面白いし。お嬢様たちが語るお尻ネタに若干引きつつも、馬鹿にすることなく、さらっと
会話に加わったりしてるし。育ちが違うせいか、一歩引いてるんだけど、学友たちの
噛み合ってるんだか噛み合ってないんだかわからない会話を、美由紀自身がちょっと
楽しんでる感じが伝わって来て微笑ましかった。女子高生が恥じらいながら『お尻、お尻』
連呼するところが何とも。今の女子高生なら何とも思わないけれども、昭和29年辺りの
お嬢様学校の生徒たちから発せられる訳で。なんだかシュールだなぁと思いました。
今回美由紀と敦子が関わる事件にも、お尻が大いに関わって来ます。その符牒として
冒頭の会話がある訳なんでしょうけど。本書は全編に亘って、お尻と河童がたくさん出て
来ます。冒頭に河童のイメージを美由紀が友人たちと話し合う場面があるのですが、言われて
みると、一概に河童といっても、いろんなイメージがあるものだなぁと思わされました。
私の中では美由紀とほぼ同じイメージを抱いていたけれど。河童は全身が緑色だと
思っていたし、頭がハゲてて背中に甲羅がついてるものだと思って来ました。
これって、多分、ほとんど昔の某ワンカップのお酒のCMのアニメのイメージだと思うん
ですよねぇ(年がバレるぞ^^;)。石燕とかが描いた河童はどうなってるんだろ。でも、
確かに河童には頭にお皿が載ってる、とかも聞きますよね。お皿が載ってるとしたら、
ハゲてる訳じゃないだろうし、凹みがあるってことですよね。そうなるとまた、
頭の形とか変わってくるわけで。なんか、読んでて私が思い描いていた河童の
イメージがちょっと崩れて行くような感覚を覚えました。うーん、河童って何なんだ!?
連続水死体事件の方は、登場人物が多いのでちょっと人間関係がわかりにくかったです。
水死のからくり自体は単純でしたけれど。お尻が浮き上がる理由にもなるほど、と
思いましたし。
終盤は一応あっちゃんが謎解きを担当するのだけど、最後はやっぱり美由紀ちゃんの
啖呵が全部持ってったな~って感じでしたね。女子高生なのに、この説得力たるや、
脱帽ものです。とても真っ直ぐで真っ当な性格なのがよくわかり、好感が持てる少女ですね。
各章の始まりが必ず品のない話云々の会話文で始まるところが面白かった。お尻だの
覗きだの、品のない話で終始していた作品だけれど、最後は切なくも美しい夫婦愛で
閉じたところが良かったです。
あっちゃんと美由紀のコンビ、やっぱり良いですね。ラストの天狗も楽しみだー。
そして、三部作が出終わったあとは・・・ついに例の作品に着手!・・・だといいなぁ。
やっぱり、京極堂とか榎さんとか関くんに(名前だけじゃなく)会いたいよぅ(涙)。
お願い、京極さん・・・(ToT)。

2019-06-28(Fri)

鈴木るりか「さよなら田中さん」/似鳥鶏「育休刑事」

こんばんはー。台風襲来でどうなることかと思いましたが、東京はさほどの雨も
降らず、さらっと行ってしまってちょっと拍子抜けでした。今日仕事だったんで
どうしたもんかと戦々恐々としていたのですけどね。
まぁ、取り越し苦労で良かったです。雨で出勤は一番気分最悪だからなぁ。
ところで、先日性懲りもなく、またメダカを買いに埼玉まで行ってしまいました。
メダカ本体よりも、交通費の方がよっぽど高かったという・・・^^;
でも、良い子たちが買えてよかったです。とりあえず、今のところ元気に
泳いでくれています。今度は長生きしてくれよ~・・・。


読了本は今回も二冊ご紹介。


鈴木るりか「さよなら、田中さん」(小学館)
少し前に、著者の二作目である『14歳、明日の時間割』を読んで、その
才能の素晴らしさに驚いて、すぐさま一作目の本書を予約しました。
中学生作家衝撃のデビュー作ということで結構話題になっていたので、
予約数もそれなりに多く、大分回って来るのに時間がかかりました。
正直、やっぱり、この方はすごい、と思わされる作品でした。これが中学生の
作品なの!?と驚きしかない。
主人公は、シングルマザーの母親に育てられる小学六年生の花実。
母親は、花実を育てる為に朝から晩まで肉体労働で働いているが、
生活は常に苦しく、親子二人倹しく暮らしている。
お金はないけど、真っ直ぐに育っている花実と、小さいことを気にせず、
いつも明るいお母さんのキャラクターが抜群に良いです。
貧乏なのに、全然悲惨な感じがないし、花実も全く卑屈な性格じゃない。
むしろ、貧乏であることを楽しんでいる風さえあるというか。ちょっとした
贅沢を幸せに感じて感動したり(普通の暮らしでは全く贅沢じゃないこと
なのだけれど)。
市内の銀杏を拾えるスポットを探して二人ででかけて行って、ひたすら
銀杏を拾いまくり、それでしばらくお腹を満たしたり。普通は、お金がないと
心までひもじくなったりして、卑屈になったり世の中を恨んだりしがち
だけど、この母娘には全くそういうところがなくて、あっけらかんと
今の人生を楽しむようなたくましいところがすごく良かった。
ただ、そんな花実にも、やっぱりお金がないことで悲しい思いをする
こともある。普段一緒につるんでいる友達二人が、花実に内緒で
ドリーミングランド(ディ○ニーランドみたいなところね)に行く予定
を立てているのを知って、つい見栄を張って一緒に行くと言ってしまい、
そのお金をどうやって工面するか悩んだ挙げ句、自動販売機の周りに落ちている
お金を探し回る羽目になったり(結局大して拾えず終わる。そりゃそうだ)。
お金がなくて、いろんなことを諦めて来た花実だからこそ、
一話目では、母親の再婚話に飛びついたりする。相手の男性が、
断りの返事を寄越すと、自分のせいだと落ち込み、母親の為に
身を引いて施設に行こうとまで思いつめる。ほんと、いい子なんだよね。
花実のキャラが大好きになりました。
その一話目のラストでは衝撃の事実が判明して、ちょっとした
ミステリー小説なみのオチになっている。これにも驚かされました。
ミステリーもいけちゃうのか、鈴木さん!
構成もよく考えられていて、ラスト一編だけは花実に思いを寄せる
同級生の男の子からの視点で描かれています。これがまた、他人から
の視点から語られることによって、花実母娘の人柄がより魅力的に
浮き彫りにされるお話になっていて、脱帽。タイトルの意味も、
ここで初めて理解出来ました。一つ一つのエピソードの描き方が
とてもリアルだし、心情も含めて文章表現の上手さに唸らされました。
ほんとにほんとに、これが中学生の文章なの?って思うくらい。
普通に、大人の作家が書いたと言われたとしても、全然疑わなかった
と思う。やっぱり、デビュー作からその才能は健在だったんですね。
個人的には、花実母娘が住むアパートの大家の息子、賢人と花実の
やり取りが好きだった。賢人は無職の引きこもりで、どうしようもない
青年なのかと思いきや、意外と真面目で花実の悩みに真摯に応えてくれる
ところが良かった。賢人が植えた桃の種が、いつか芽を出して成長
するといいな、と思いました。
やっぱり素晴らしい才能を持った作家さんだと改めて思わせてくれる
素敵な作品でした。面白かった。早く新作も書いていただきたいな。



似鳥鶏「育休刑事」(幻冬舎)
似鳥さん最新作。タイトル通り、育休中の刑事が主人公。でも、育休中にも
関わらず、なぜか次々と事件に巻き込まれ、生まれたばかりの赤ちゃんを連れて
捜査の手伝いをしなければいけない状況に追い込まれる、というお話。三作の中編が
収録されています。
一作目から赤ちゃんごと強盗事件に巻き込まれたりして、ほのぼのタイトルの割に
ヘビーな内容から始まるんですが、二作目では殺人未遂事件に巻き込まれ、ラスト一作
では爆弾テロ事件に巻き込まれる羽目になるという、だんだんと事件のスケールが
大きくなって行く辺りの流れはいつも通り。似鳥さんって、最後は必ずパニック映画
のような展開にしたがりますよね。そこまで風呂敷広げんでも、っていつも思うん
だよね。まぁ、パニック映画とかパンデミック映画みたいなのがお好きなんでしょうけど。
とはいえ、ミステリとしても面白かったですが、それ以上に育児あるあるがリアルなのが
良かったですね。すごい真に迫ってるなぁと思ったら、案の定、ご自身の経験が
大いに生かされてらっしゃるそうで。お子様が生まれたところからこの設定が生まれた
そうです。どうりで主人公の春風の育児心理にリアリティがある訳だ。特に、息子の
蓮くんの夜泣きが酷くて大変だった場面の、春風の一瞬の狂気の描写はとてもリアルだった。
育児ノイローゼになるお母さんたちもきっとこういう感情は身に覚えがあるんだろうな、
と思えました。子供のいない私にはなかなか理解し難い感情ではあるんですが。きっと、
お子さんがいる方なら、春風の心理描写に共感しまくりなんじゃないかな。もちろん、
一作通して、大変なこと以上に我が子に対する愛情が勝るってところもきちんと伝わって
来ましたし。
ミステリ的には、二作目の瞬間移動する車の話が面白かった。不可能を可能にする
方法の真相を知って、なるほど、こういうからくりだったのか、と腑に落ちました。
ただ、ラストの爆弾テロの話は、狙われた課長が、わざわざ人の多いショッピングモール
に出かけるところに首をかしげてしまった。そんな場所で万が一のことがあったら、
犠牲者だって半端じゃない数出てしまうのに。休暇を家族と過ごすとしても、もっと
自然が多い場所とか、被害を最小限にするような場所を選ぶべきだと思うんですが。
確かに、犯人としては人が多い場所の方が狙いやすいのだろうけど。おとり捜査だと
しても、その辺りのやり方に疑問を感じずにはいられなかったです。
課長の正体は、実は最初の方に予想がついてしまった。やっぱりそうだったかーって
感じでした。最初から、ちょこちょこ怪しい伏線は出て来ていましたからねぇ。
こういう仕掛けは似鳥さんらしいですね。
何より、蓮くんが愛らしくて、春風が慣れない育児におたおたする姿が微笑ましかった
です。何かと事件に巻き込まれてしまう蓮くん、今後の成長がちょっと心配になりつつ、
楽しみです。優秀な両親に育てられてどんな子供に育つのかな。
そして、途中に出て来る注釈とあとがきはいつもと相変わらず面白かったです。
プロフィール

べる

Author:べる
ヤフーブログ終了に伴い、過去記事保存の為開設しました。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR

Powered by FC2 Blog