2010-07-29(Thu)

伊坂幸太郎/「バイバイ、ブラックバード」/双葉社刊


伊坂幸太郎さんの「バイバイ、ブラックバード」。

星野一彦は、借金の為、二週間後に得体の知れないバスに乗ってどこかに連れて行かれる運命に。
バスに乗ったら、もう二度と同じ日常には戻って来れないだろう。一彦は、バスに乗る前に、
付き合っていた5人の彼女たちにお別れを言う為、『監視者』の繭美と共に一人一人のところを
訪れるのだが――太宰治の未完の絶筆『グッド・バイ』から着想を得た、1話50人の為の
『ゆうびん小説』、ついに書籍化。


伊坂さんの新刊。双葉社が企画した「ゆうびん小説」という変わった形で発表された作品を
単行本化したものだそう。「ゆうびん小説」って何ぞや?って感じですが、一話書き上げる毎に、
抽選に応募して当選した50人の人にそれを送って読んでもらう、というものだそうです。
ある意味、これも最近の伊坂作品の傾向にある『実験的な小説』のひとつなんでしょう。ただ、
作品自体は、初期からの伊坂さんらしい作品に仕上がっていると思います。キャラ造詣の良さ、
会話文の洒脱さに加えて、泥棒ネタや、笑える要素、ほろりとさせる要素がまんべんなく散りばめ
られていて、とても楽しく読めました。主人公の5股に加え、外見的にはマツコ・デラックスかと
思われるようなビジュアルなくせに、やたらに高飛車で傲岸不遜な繭美の言動など、一見不快にしか
感じないような要素が多いのに、読んでいると、なぜかこの二人がどんどん好きに思えてくるから
不思議です。一彦の5股は、女性からしたら許せない行為には違いないのですが、一彦がどの女性
とも真剣に付き合い、愛情を注いでいたのがわかるし、彼の純粋な人柄も伝わって来るからどうも
憎めなくなってしまう。繭美は繭美で、誰に対してもやたらに上から目線な態度で、アンタどんだけ
偉いんだ、とツッコミたくなるような言動ばかり。でも、なぜか痛快に思えてしまう。この辺りの
キャラ造詣の絶妙さはさすがとしか言いようがないですね。一彦がなぜバスに乗る羽目になった
のか、その辺りは結局最後まで明かされません。あくまでも、一彦が付き合っていた5人の女性
たちと、それぞれどのように出会って付き合って、お別れするのか、がメインのストーリー。
だから何だって思うようなお話とも言えるのですが、これがそれぞれ、なかなかに心に沁みる
物語になっていて読ませてくれるのです。それぞれにページ数は少ないけれど、じんわり心に
残るお話ばかりでした。そして、何といっても、書き下ろしのラスト一編が秀逸。特に最後の
繭美の行動がなんとも痛快で気持ち良い。読み終えて、爽快な読後感に包まれました。もちろん、
最後の最後で「かかった」と思っていいんでしょうね、これは。「した」で終わってるところが、
いいですよね(読んだ方なら、意味がわかるはず)。
「ゆうびん小説」という、変わった形態で出された作品ですが、内容は実に伊坂さんらしい
洒脱で小技の効いた作品になっていると思います。着想を得たという太宰の『グッド・バイ』
の方も読んでみたいです。絶筆となった作品がこういうタイトルというところが、何とも
意味深ですが。やっぱり、太宰は自らの死を意識して書いていたのかな。

一彦が付き合っていた5人の女性の中では、キャッツアイ女の如月ユミが面白かったな。泥棒が
趣味って(苦笑)。数字が趣味の神田那美子のお話も良かった。特にラストが切なくて、じーん
としてしまいました。もちろん、女優有須睦子のパンのくだりもね。一見、一彦はどの女性とも
対して深く付き合ってなかったのかな、と思えるのだけれど(なんせ同時に5人と付き合っていた
訳だし)、実はどの女性に対しても真摯に深く愛情を注いでいて、相手からも同じように愛されて
いたのがわかります。でも、だからといってやっぱり5股は許しがたいと思うけれどもね。

こういう小説を書いてくれてる限りは、第二期の伊坂さんも大丈夫って思えるな。やっぱり、
私はこの人の書く世界が、文章が、大好きです。
スポンサーサイト



2010-07-27(Tue)

京極夏彦/「西巷説百物語」/角川書店刊



京極夏彦さんの「西巷説百物語」。

人が生きて行くには痛みが伴う。そして、人の数だけ痛みがあり、傷むところも、傷み方も
それぞれちがう……様々に生きづらさを背負う人間たちの業を、林蔵があざやかな仕掛けで
解き放つ。シリーズ第五弾(あらすじ抜粋)。


「これで終いの金毘羅さんやで」


大好きな巷説シリーズ、最新刊です。発売記念イベントがあるというので、行って来ました。
このイベントがまぁ、めちゃくちゃお得でして。イベント+直筆のサイン本つきで2200円。
有り得ません。だって、本だけで1900円するんですよ!?サインだけで付加価値300円
以上あるでしょう。しかも、サインがめっちゃかっこいい。このサインもらえるだけであと
1000円出しても全然惜しくない。
普段あまり東京に来てくれない京極さんが、東京でイベントをやるとなったら、もうこれは
行くしかないでしょう。というわけで、いそいそと仕事終わりにかけつけたのでした。
最初一人で行こうかと思っていたのだけど、巷説ファンの友人にこの話をしたら、彼女も別途で
チケットを入手したというので、イベント前に食事して一緒に会場入り(別々に取ったから
席はばらばらだったけど^^;)。
イベントは全部で四部構成。一部は京極さんによる巷説シリーズの一編の朗読(『帷子辻』)。
二部がアニメ(『小豆洗い』)。三部が杉江さんとのトークショー。四部が実写映画
『怪・福神ながし』)。
イベントの始まりが9時半という遅い時間で、四部までいると終電が間に合わなくなってしまう
為、私は三部で泣く泣く帰途につきました。ただ、多分四部の映画はWOWOWで以前に観ていると
思うので、まぁいいかって感じ(もしかしたら、探せばどっかにビデオが残っているかも・・・)。

驚いたのは京極さんの朗読の上手さ。巷説シリーズの世界観そのものの声と語り口。二部の
アニメの声優なんかよりもよっぽど又市さんはイメージぴったりでした。人物によって声色を
きちんと使い分けていて、登場人物の誰が話しているのか(といっても、二人とナレーション
くらいしか出て来なかったけど)如実にわかるんです。落語とかやっても上手にやれそう。
しかし、ほんとに何でも出来る人だなぁとしみじみ感心してしまった。しかも、どれも普通の人
より遥かに上手に出来てしまうんだから脱帽です。いやはや。超人ってこういう人のこと言う
んだろうなぁ。
それに対して、二部のアニメは不満しか覚えませんでした。キャラ造詣からしてどう考えても
間違ってる。ストーリーも脚色しまくりだし。ほんとに、又市さんのビジュアルにはびっくり
だったよ・・・私の中では又市さんは田辺誠一のイメージなんだよーー!(間違っても、
六平直政さんでは、ナイ)
そして、やっぱり三部のトークショーが一番楽しかったです。巷説シリーズの裏話なんかも
たくさん話してくれました。一作目でやめたかったってのには驚いた。楽しんで書いているの
かと思いきや、毎回嫌々ながら水木(しげる)御大に命令されて仕方なく続けていたそうな。
『怪』が続く限りは書き続けると思っていたのですが、一応本書で完結なのだそうです。
書いていない長編が一本あるそうなのですが、書かれるかどうかは未定だそう。ちなみに、
私が観れなかった映画『福神ながし』はその長編の一部なんだそうです(つまり、これだけは
原作が存在しないお話なんだって)。
しかし、こんなに短い期間で二回も書評家の杉江(松恋)さんに会うことになろうとは(笑)。
まぁ、このイベント自体が、杉江さんのブログで情報を知ったんですけどね(苦笑)。
お化け大学校なんて学校ができてるのも全く知らなかったです。さすがに入学金払って
入ろうとは思いませんでしたが^^;

京極さん、当日配布されるサイン本のサインをイベントの直前まで書いてらしたそうで
(300人分!)、かなりお疲れ気味のご様子でした。でも、いつもの和装に黒い手甲、
相変わらずの出で立ちで素敵でした。あっという間の時間でしたが、楽しい一夜でした。




って、前置きが長くて(長すぎて?^^;)すみません^^;一応、イベントレポートは書いて
おきたかったので~^^;
さてさて、肝心の本書の感想ですが。前置きが長くなったのでなるべく手短に・・・(おい)。
タイトルにあるように、今回の舞台は江戸を飛び出して西、つまり大阪です。そして、メインで
出て来るのも又市さんたちではなく、西で同じような仕掛け稼業を生業にしている林蔵一味。
一文字屋仁蔵が営む、読み本刷り物の版元『一文字屋』は、上方の裏渡世を束ねる陰の顔があり、
林蔵一味はその手下として働いています。一文字屋に持ち込まれた依頼を遂行する為、彼らは
いろんな仕掛けを施す。この辺りは又市さんたちのやることと基本的にはそんなに変わりません。
ただ、仕掛け自体は又市さんたちよりは地味かな。今回、どの話も語り手が林蔵たちのターゲット、
つまり悪人側。これは京極さんご自身も言ってらしたことなのだけれど、どんなに悪人でも、
語り手になるとその心理描写が直接伝わって来るから、なんとなく情が芽生えて完全な悪人に
感じられなくなるんですよね。もちろん、最初に悪いことをしたのは語り手側(悪人側)な訳で、
最終的には林蔵たちによる鉄槌が下されることになる訳なんですけれど。でも、林蔵たちは、
最後の最後で、標的である人物に選択肢を突きつける。そこで正しい選択をすれば、最悪の
事態は避けられる筈なのだけれど、悪人はやっぱり最後まで悪人でしかなく、間違った選択を
選んでしまうのですよね。そして、結局は因果応報に落ち着く。どのお話も容赦のないラスト
ではあるのですが、不思議と読後感は悪くない。やっぱり、勧善懲悪の世界だらかでしょう。
悪いことをした人間には、それ相応の罰が下る。そういうところに胸がすく思いがするんです
よね。

ただ、唯一『豆狸』だけはちょっぴり毛色が変わっていて、語り手は悪人ではなく、終わり方も
因果応報ではありませんでした。それがまたほろりと出来る良いお話になっていて、こちらは
こちらで良かったです。

書き下ろしのラスト一編『野狐』では、又市さんや百介さんといったお馴染みメンバーも出演。
林蔵×又市の二大スター(笑)の競演が嬉しい一作でした。内容的には切なくやるせない作品では
あるのですが。又市さんにも悲しい恋の過去があったように、林蔵にも悲恋の思い出があったの
ですね・・・。

仕掛けは又市シリーズよりも控えめですが、勧善懲悪の世界観はこちらも共通で、巷説シリーズ
らしい小技の効いた作品ばかりで楽しめました。とにかく、やっぱり文章が抜群に素晴らしいので
淀みなく読めるところがいいですね。文章読んでるだけで満足。やっぱり、このシリーズは
いいなぁ。でも、林蔵の決め台詞さながらに、本当に本書で巷説シリーズは一応の終焉を
迎えたと言っていいようです。先述した『福神ながし』の長編の構想はあるそうなのですが、
もし書かれるとしても、角川から本書のような形式で出ることは多分ないだろうということです。
大好きなシリーズが終わってしまうのは本当に寂しい。でも、きっと又市さんや林蔵にはまた
違う作品で出会えると信じています(又市さんは幽霊シリーズにも必ず登場しているしね)。
取り敢えず、これが一段落ついたってことは、次はいい加減『鵺の碑』の番でしょう。だから、
いい加減書いて下さい。ほんとに、お願いしますよ、もう。


頂いたサイン本。サインめっちゃかっこよくないですか!?右上の文字は、もらった人によって
違うらしい。どうやら私と同じ『桂男』が一番多いみたいですが(多分、一番簡単に書けるから
だろうな(苦笑))。中には絵が描いてある人もいたようです。ううう、羨ましい~~~!!
でも、これでも十分。一生の宝にします♪
ちなみに左のポストカードもおまけとして挟まってました。これもかっこいー(*^^*)







記事がやたらに長くてすみません^^;
このシリーズは、ほんとに時代物とか時代劇とか好きな人には是非とも読んでもらいたい。
まさしく京極版『必殺仕事人』。胸がすくような勧善懲悪の世界を是非堪能してもらいたいと
思います。



<追記>
シリーズの順番がわかりにくいとおっしゃっている方がいらっしゃいましたので、刊行された順
を書いておきますね。少しでも参考にして頂ければ幸いです。


『巷説百物語(こうせつひゃくものがたり)』
『続巷説百物語(ぞくこうせつひゃくものがたり)』
『後巷説百物語(のちのこうせつひゃくものがたり)』 ※直木賞受賞作。
『前巷説百物語(さきのこうせつひゃくものがたり)』
『西巷説百物語(にしのこうせつひゃくものがたり)』


多分みなさん、続と後で混乱するんでしょうね(笑)。前と西はわかりやすいですから。
『後~』は明治時代が舞台で、又市さんたちと別れた百介さんが老人になっていて、過去を
振り返る形式になっている作品。時代が違うから当然とはいえ、亡くなっているキャラがいると
やっぱり悲しかったな。

ただし、時系列はこの通りではありませんし、一話完結形式になっているので、どの作品から
読んでも基本的にはあまり問題はないと思います。本書なんかは、一作目(『巷説~』)と
重複してる感じかな。
本書の中に巷説世界の解説リーフレットがついていて、とても有り難い。
リアルタイムで読んでいる身としては、いつも脇役で出て来た登場人物とか時系列とかさっぱり
忘れてる状態で読んでるので^^;;
ちなみに本書で活躍する林蔵は、『前巷説~』に出て来たキャラってことなんですが、
やっぱりきれいさっぱり忘れていたのでした・・・あ、あはあは~(汗)。

2010-07-26(Mon)

鯨統一郎/「今宵、バーで謎解きを」/カッパノベルス刊


鯨統一郎さんの「今宵、バーで謎解きを」。

バー<森へ抜ける道>で42歳の厄年の時に知り合った山内、僕、マスターの『ヤクドシトリオ』
は、毎夜美味しいお酒とチーズを嗜みながら、くだらない四方山話に興じる。そこにひと度
殺人事件の話題が出ると、大学院生になってますます美しくなった桜川東子さんこと『アリバイ
崩しの東子』が話に加わる。容疑者の鉄壁のアリバイも、東子さんの酔推(すいすい)にかかれば
ひとたまりもない。今宵も東子さんのギリシャ神話になぞらえた名推理が冴え渡る――シリーズ
第三弾。


バーミステリシリーズ(ヤクドシトリオシリーズ??)第三弾。相変わらずゆるいですねぇ。
今回はどのお話もギリシア神話をヒントにした謎解き。これがまたギリシア神話である必要性が
さほど感じられず、からまわりしているような気がなきにしもあらずだったりして(^^;)。
でも、そこを突っ込んじゃぁ、いけません。鯨ミステリはそのとんちんかんなところも愛して
あげなければ。はっきりいって、ミステリとしてどうこうよりも、その前哨戦(?)となって
いるヤクドシトリオのアホ会話の方が面白くって、殺人事件の顛末なんかどうでもよくなっ
ちゃってました(苦笑)。恒例のなつかし会話も可笑しかったです。一話ごとに違うワイン
とチーズが饗され、それを嗜みながら雑談と推理が始まるのが毎度のパターン。鯨さんの
この手の短編集って、必ず決まった黄金パターンがあって、それに則ってお話が書かれるのが
セオリーになってます。良く云えばテレビの時代劇のように安心して読めるのですが、、
悪く云えばワンパターンなせいで、何作か続けて読むと若干飽きて来るところが。似たような
展開だから強く印象に残る作品がないのもちょっと痛いかな。まぁ、個人的にはヤクドシトリオの
アホな会話と、それを軽くいなしつつ我が推理に邁進する東子さんとのやりとりだけでも十分
満足出来るんですけどね(苦笑)。

東子さんのキャラ、『すべての美人は名探偵である』に出て来た時とはやっぱり随分違うという
感じがしますね。このバーにいる時はあくまでも高嶺の花のお嬢様そのもので、マスターの
アホな話題(時に下ネタも)をあっさりスルーして、興味があるのは殺人事件の顛末のみ。
ヤクドシトリオの会話にはとんと無関心を装っているくせに、最近起きた殺人事件の話題を
匂わす言葉を発したとたんにここぞとばかりに会話に参加。なんとも不思議なキャラクター。
しかも、なぜか今回、毎回ギリシア神話を引用しつつの推理。前作では日本の昔話がモチーフに
なっていたけど、東子さんはどうやらその時に研究している題材を推理に転用する傾向にある
ようですね。なんだか、苦しいなぁというのが多いんだけど、まぁ鯨さんだし。あんまり
深く考えちゃいけません。マスターのアホな発言に対する工藤の冷静なツッコミに毎回吹き出して
しまいました(笑)。ヤクドシトリオのなつかし話に関しては若干時代がずれているのでピンと
来ないものもあったのですが、基本的には『懐かし~』と感慨にひたりながら読めるネタが
多くて楽しめました。
『くだらない!』と一刀両断に切りすてる人も多いでしょうが、私はこのアホでくだらない
ゆるさが大好きです。なんだかんだでやっぱりクジラーはやめられないのでした。
なんか、作品自体に対する感想をほとんど書いてないような気がするけれど・・・ま、いっか。

2010-07-25(Sun)

花火大会






みなさまこんばんはー。

猛暑の毎日、いかがお過ごしでしょうか。
今日は、毎年恒例、地元の花火大会に行って参りました。
えー、私のアホな行動のせいで、今年もまた浴衣を新調する羽目になりまして。
最初は姉が今年買った浴衣を借りて行こうかとも思っていたのですが、たまたま
バーゲンで気に入った浴衣がかなり安く売っていたので、大した値段じゃないし、
思い切って買ってしまいました。
なんとなく、アバターに合わせたかのように朝顔柄。毎年白地なのは、単に私の好みの問題(笑)。
ただ、最初黒地の百合柄とどっちにしようか迷っていたのだけど、ベテランっぽい売り子の
おばちゃんが『花火で夜着るなら絶対白い方が映えるからこっち(朝顔)にしなさい!』と
アドバイスしてくれたので、そちらにしました。百合柄の方が高かったのにね。んで、結果、
やっぱり夜暗くなってからだと白地の方が綺麗に見えるのがわかりました。暑かったから
涼しげに見えたのも良かった。帯は去年のユニクロだけどね。でもアバターの帯とこれまた
不思議と被っていて笑えます(苦笑)。
それに、おばちゃんが勧めてくれた下駄も合わせて買ったのですが、これが驚くほど
履きやすくて(超安いのに)、今年は全く靴擦れを起こさず楽に歩けました。やっぱり、
経験と年の功って大事だ。アドバイスのひとつひとつがいちいち全部的を得ていて感心しました。
売り子のおばちゃんに感謝。ありがとう。


ところで、今年初めて知った事実なんですが、この毎年恒例の地元の花火大会、主催者側が
地元住民への感謝の気持ちから開催しているイベントな為、HPや雑誌等、一般には一切
情報を公開していないのだそう。だから、今年いくらネットで探しても、HPを検索しても
なかなかいつやるかの情報が載っていなかったのね。今年は開催されないんじゃないかと
ひやひやしちゃいました。市民に配布される広報にだけは情報が載ったそうですが(私は
見なかったけど)。年々人が増えてるなぁと思っていたけど、あれは全部口コミで広がった
せいだったんだなぁ。でも、住民側としては、そういう意図で開催してくれるのはやっぱり
嬉しいです。でも、非公式でもやっぱり今年もすごい人出だったけどね。


ちなみに、花火記事恒例だった『どちらが私でしょうクイズ』ですが、今年は二人で
行ったせいで一人づつの写真しか撮れなかった為、出すことが出来ません。残念(え、誰も残念じゃ
ないって?^^;)。せっかく浴衣新調したのにな。


始まる少し前から天候が怪しくなって、雷までゴロゴロし出して、ついに開始20分前くらいに
ぽつぽつと雨が降りだしたので開催されるかヒヤヒヤしたのですが、大した降りではなかった
ので、無事決行。今年も30分間6000発の花火ショーを堪能しました。短い時間で一気に
打ち上げてくれるから好きなのよ、この大会。特にラスト5分は毎度ながら圧巻。見応えありました。

















花火の写真って、ほんとシャッターチャンスが難しい。なかなか思うようなタイミングで
シャッターが押せなくて、あんまり綺麗な写真がなくてすみません^^;
でも、携帯を機種変したおかげで、去年までより遥かに画像は綺麗になっている筈・・・。
撮る人間が悪いと、いくら機械の機能がUPしてもダメなのね^^;




では、最後にどーでもいい私の浴衣姿でお目汚し^^;
クイズ出したかったのになぁ。ちぇ(さすがに三回目の方にはわかってほしいけれど)。
初めて見る方は、ここがどこなのかおわかりになるでしょうか?^^
(常連さんはお見通しですね^^)





2010-07-24(Sat)

加納朋子/「七人の敵がいる」/集英社刊


加納朋子さんの「七人の敵がいる」。

出版社でバリバリに仕事をこなすワーキングマザーの陽子。一人息子が入学して初めての保護者会
ならばと、忙しい合間をぬって出席したが、PTA役員を決める段になって場の空気が読めず、一人
暴走して顰蹙を買って、早々に『敵』を作ってしまう。働きながら子供を育てる陽子にとって、
学校も家庭も、周りは敵だらけ。それでも、可愛い息子の為に、立ちはだかる敵には戦いを挑む
のみ!痛快PTAエンターテイメント小説。


やー、痛快、痛快。PTA小説とは、加納さんらしからぬ題材を持って来たなぁと驚きと戸惑いを
持って読み始めましたが、主人公陽子さんの竹を割ったようなさばけた言動がいちいち小気味良く、
読んでいて、すかっとしました。小学生くらいの子供を持つ母親ならば間違いなく共感出来る作品
なのではないでしょうか(独身の私でも十分共感出来たくらいなのですもの)。出版社でバリバリ
働くワーキングマザーの陽子さんが、学校や家庭で起きる様々な問題に立ち向かう子育てママの
奮闘記。働くお母さんが学校行事やPTAの活動に参加するには、なんとたくさんの障害が待ち受けて
いることか!
私が子供の頃だってPTAのお母さんたちはちょっと怖いってイメージがあったけれど、今はその
頃よりももっと組織として確立されていて、モンスターペアレントたちがわんさといるんだろう
なぁ、と戦々恐々としながら読んでました。例えばこの先私に子供が出来たとして、同じような
問題に直面したとしても、私には到底陽子さんのように立ち向かえる自信はないです^^;
多分、現在子育て中のママたちだって、同じような問題で嫌な思いをしている人がたくさん
いるだろうし、その多くは泣き寝入りして終わりだったりするんじゃないだろうか。陽子さんの
その場の空気が読めない言動の多くは、確かに取り方によっては傲慢で身勝手に思えてしまうもの
ばかりで、専業主婦や頭の固い学校関係者たちからは反発を覚えられても仕方ない。働いているから
というのを理由にして、PTAの役員や行事を辞退したりすれば、その分他の誰かがやらなきゃいけない
訳で、「あの人だけずるい」という感情が出て来るのも当然だと思うし。出席しない分、陰口を
叩かれるのもむべなるかな。私も最初は「あー、確かにこういう言動って敵作っちゃうし、私が
その場にいても反発覚えちゃうかもなぁ」と少々呆れながら読んでいたのですが、可愛い息子の為、
自分を曲げて忙しい合間をぬって役員をしたりPTA会議に参加したり、時には問題がある生徒の父母
や教師と真剣にわたり合う陽子さんは、子供を思う母親としても、出来る仕事人としても正しく
潔い人だなぁと一作ごとに好印象に変わっていきました。

子供を育てる母親にとって、学校でも家庭でも、敵になりうる人はどこにでもいるものなんですねぇ。
タイトル通り、本書には一作ごとに陽子さんに敵対する7人の敵が出て来ます。敵といっても、
学校だけではなく、義母や夫や息子なんて身内までが時と場合によっては敵になりうる訳で、家庭内
でも油断はできません。でも、その時々で真正面からその敵に立ち向かい、攻略していく陽子さん
は、さながらRPGゲームの勇者のようです。ラストではラスボスとして最強の敵が登場しますしね。
でも、最強の敵と対峙し攻略した後の、その後の展開がとても良かった。『七人の敵がいる・・・
されど・・・』という言葉があるということも、恥ずかしながら初めて知ったのだけれど、その
『されど』に続く言葉がオチになって、とても爽快で気持ちの良い読後感になっています。でも、
良く考えると他のお話でも、同じようなオチになってるんですよね。それはやっぱり、みんなが
陽子さんの言動に感心し、賛同したからこそだと思うんですけどね。五十嵐さんとの関係が個人的
には好きでした。
あと、忘れちゃいけないのが、息子の陽介君の存在。なんだか、ほんとに健気で愛らしくて、
いい子だなぁと思いました。母親が非難されそうになると、すかさずフォローに回る姿がなんとも
いじらしくて。それだけに、彼と陽子の関係にはかなり驚かされました。まさかそういう展開が
あるとは。こういう設定を盛り込むところが加納さんらしいと思う。単なる痛快なだけのエンタメ
かと思いきや、ちょっぴり苦く重いものを含ませるところが。でも、それが陽子さんにとっても
陽介君にとっても、何の障壁にもなっていないところが良かったです(ひと騒動はあったけれど、
それでより親子の絆は深まっているので)。


脇役キャラも個性的で良かったです。6話で陽子が高校時代にソフトボール部だったという記述が
出て来るので、当然ながら『月曜日の水玉模様』『レイン、レインボウ』のシリーズと繋がって
いると考えていいのでしょうね。陽子さんって出て来てましたっけねぇ(全然覚えてナイ^^;)。
ただ、6話で陽子にアドバイスする高校時代の友達は、児童養護施設で働いているってことなので、
陶子さんではないようですが。じゃ、一体誰なんだって話なんですが(わかる人がいたら教えて
欲しい)。読書メーターで感想を見ていたら、タイトルが全部『7』に関するものが入っていると
書いている方がいて、目からウロコでした。確かに!(偶然じゃぁ、ないよね)

独身の私でもとっても痛快に楽しく読めたので、子供がいる方なら私以上に共感して読めるのでは
ないかな。専業主婦も兼業主婦も関係なく、お母さんは子供の為に毎日戦っているんだなぁと
しみじみ思わせてくれる作品でした。
あとがきによると、加納さんご自身の体験もかなり作品に反映されているようです。だからリアル
なんだろうなぁ。気になるのは、旦那さんの貫井さんがどれ位子供の学校行事やPTA会議に参加
しているかってところですが(苦笑)。加納さん曰く、仕事と作家の両立よりも、仕事と母親業
(この場合は父親業か)との両立の方がずっと大変だそうですからね^^;

これ、近い将来、観月ありさか天海祐希あたりの女優を主役に立ててドラマ化でもされそうだな。
一話完結だし、勧善懲悪に近いような展開だから、ドラマ化しやすそうだしね。

2010-07-22(Thu)

「借りぐらしのアリエッティ」



「借りぐらしのアリエッティ」

監督:米林宏昌
企画:宮崎駿
原作:メアリー・ノートン
声優:志田未来、神木隆之介、三浦友和、大竹しのぶ、竹下景子、樹木希林 他。

<あらすじ>
古い家の台所の下に住み、暮らしに必要なものはすべて床の上の人間から借りてくる借りぐらしの
小人たち。そんな小人一家の14歳、アリエッティは、好奇心と伸びやかな感性を持つ少女。だが、
人間に見られないよう、目立たないよう、つつましさと用心深さを求められる毎日を送っていた
(あらすじ抜粋)。


今日は姪っ子(小4)の誕生日だったので、前売り券を買って誕生日祝いに連れて行ってあげました。
夏休みなのでファミリー向け映画は混むかもしれないと思い、二日前に座席を引き換えておいた
のですが、私の希望は『スクリーン後方の真ん中』だった筈なのに、渡された半券の席に着いて
みたら、『前列二番目』のド真ん前。なんで、どうして、私の希望は後ろ側だったはずなのにー!
と完全パニック。引き換えのチケット渡された時、まさかそんなミスをされているとは思わないから、
ちゃんと確認しなかった私も悪かったけど、それにしてもあまりにも観にくいのでどうしたものかと
しばし途方にくれてしまった。そのまま観るしかないかと一度は諦めかけたのだけど、やっぱり
500席くらいある大きなスクリーンの前から二番目ってのはあまりにも観にくすぎる。姪っ子も
「前過ぎて首が痛くなりそう・・・」と言うので、とにかく劇場自体は空いているのだからダメもとで
座席を変えてもらえるのか交渉しに行ってみると、あっさり非を認めてもらえて交換してもらえ
ました。当初向こうから言われた座席は当然のことながらうまっていて無理でしたが、それに
近い席だったので溜飲が下がりました。こんな簡単に変更してもらえるなら悩まなきゃ良かった
と思いました^^;まぁ、向こうのミスなのは確かなんだから当然なのかもしれないですが、
これが満席だったら変更は無理だった訳で。空いてる地元の映画館で良かったよ・・・。
それにしても、なんで後ろの方の席を希望してるのにあんな真ん前になってしまったのか。
あり得ないミスだよなぁ。初めてだよ、こんなの。もー(怒)。

というわけで、のっけからハプニングに見舞われ、少々テンション下がり気味だったのですが、
映画自体はなかなか楽しかったです。90分ちょっとしかないので全体的に物足りなさを
感じるのは前作のポニョ同様だったのですが、人間の住む家の床下で密かに暮らす小人の世界
が可愛らしくて、ミニチュアの世界を観ているだけでも楽しかったです。ストーリーとしては
人間側の登場人物から見ると大した事件が起きる訳ではないのですが、アリエッティ家族から
見ると、一家存続の危機という大ピンチに見舞われることになります。その落差が両者の住む
世界の違い、あるいは弱者と強者の違いをありありとと感じさせていたように思います。
アリエッティたちは、人間たちからほんの少しいろんなものを『借り』て、それを生活居住空間に
生かして生活しています。借りるものは様々。人間にとっては小さな道具一つが、アリエッティ
たちにとっては手に余るくらい大きくて実用性のあるものに変わっているところが面白い。
例えばまち針一本がアリエッティの武器であったり、アリエッティの髪をまとめている大きな
クリップは、人間にとっては小さな小さなミニサイズのクリップ。安全ピンが物をかけるフック
になっていたりとかね。そのひとつひとつがいちいち可愛い。作中で重要な役目を担う本格的な
ドールハウスの小道具も、アリエッティたちにとってはぴったりサイズ。キッチンのオーブン
が、火を入れると本当に使えるというのに驚きました。本物のドールハウスもそこまで精巧
なんでしょうか。実物を見てみたいものです。

ただ、ストーリーに大した起伏がある訳でもなく、ラストも「え、ここで終わっちゃうの?」
ってところでエンディングを迎えるので、小人の世界に興味がないひとにとっては、かなり
物足りなさを感じてしまうかも。映像はジブリらしくてとっても良かったですが。

個人的には、アリエッティと翔の関係をもう少し深めて劇的にして欲しかったかなーって
思いました。翔は、声を担当した神木くん自身がモデルとなっているだけあって、病弱で
薄倖の美少年然とした感じがなかなか良かったです。花畑が実にお似合いで(笑)。ただ、
声優としてはなんとなく違和感を覚えたところもあったような。実写でやった方がはまるのでは。

今回も声優を担当するのはやたらに豪華なメンバーたち。毎回思うけど、普通に本職の声優で
やった方がよっぽどいい映画になる気はするんだけどねぇ。ただ、今回突出して良かったのは
お手伝いのハルさん役の樹木希林さん。このハルさん自身がなかなかに強烈なキャラなのですが、
それに希琳さんのキャラがぴたりとはまっていて、笑えました。やることは全く笑えないんだけどね、
なんか彼女の登場シーンは笑いが起きるんですよね(苦笑)。腹黒な感じが、なんとも言えず
面白いキャラでした。
あと気に入ったのは猫のニーヤのキャラ。すんごい目付き悪くて、最初怖い猫かと思ったけど、
実はかなりいいヤツ(笑)。ジブリの猫キャラはいつもキャラが立ってて好きだなー。




以下、作品のラストに触れています。これから観に行かれる方はご注意下さい。















やっぱり、一番気になるのは、アリエッティと別れた後の翔の運命ですかね。えー、ここで
終わっちゃうのーーー!とかなり不満が。その後は各自で想像して下さい、ってやつなんだろう
けど。翔にとっては、明るい未来が待っていると信じたいですが。翔がアリエッティに『君は僕
の心臓だ』と告げるシーンには切なさでいっぱいになりました。あのまま、翔が譲り受けるで
あろうドールハウスでアリエッティ家族が暮らせるような未来だったらいいのに。そんな甘い
未来があり得ないことも、翔とアリエッティが二度と再会しないだろうこともわかっては
いるのだけれど。せめて、翔の手術が成功する未来であって欲しいな。













関連グッズもなかなか可愛くて、大して文庫も読まないくせに、ついついブックカバーを買って
しまった(笑)。ブックマークのお花が可愛いんだもん。行かなかった本好きの甥っ子にあげよう
かとも思ったけど、さすがに中2の男子がアリエッティの顔が入ったラブリーなブックカバー
なんか恥ずかしいだろうと思ったからやめておきました(苦笑)。姪っ子には四つの絵柄の入った
スタンプセットが欲しいというので買ってあげました。映画自体もそれなりに楽しんでたみたい
なので良かったです(笑)。ただ、最後までなぜか映画のタイトルを『一人暮らしのエリエッティ』
と間違って覚えてましたが・・・(全部微妙にズレている(笑))。ちょっととぼけたところもあるけど(^^;)、
私にとっては可愛い姪っ子です(笑)。10歳の誕生日、おめでとう。


ブックカバー。スピンのオレンジのお花が可愛らしい♪


2010-07-22(Thu)

米澤穂信/「ふたりの距離の概算」/角川書店刊


米澤穂信さんの「ふたりの距離の概算」。

春、奉太郎の所属する古典部に、新入生の大日向友子が仮入部してきた。他のメンバーたちとも
上手くやっているようで、このまま入部かと思われていた。しかし、突然大日向から入部を
辞めると言われてしまう。どうやら、原因は千反田らしいのだが、本人たちは話したがらない。
一体何があったのか。奉太郎は、翌日のマラソン大会中にこの謎を解こうと、走りながら古典部
のメンバーたちと接触し始めるのだが――<古典部>シリーズ最新作。



大人気古典部シリーズ最新作。面白かったです。構成は至ってシンプル。マラソン大会の間に
ある一つの謎を解く為、奉太郎が過去に起きた出来事を反芻し、関係者と接触しながらあれこれと
推理を巡らす、という。マラソンを走っている間に謎を推理するって構成は、鳥飼(否宇)
さんの作品『激走福岡国際マラソン 42.195キロの謎』を思い出しますが、こちらのランナー
奉太郎は、基本的にマラソンなんて走りたくないと思っている為、ちょくちょくズルをします。
私も気管支が弱くてマラソン大会は大嫌いだったから、奉太郎がマラソン大会が雨でなくなれば
いいと願う気持ちには非常に共感出来たのですけどね。でも、こういう行事でいくら苦手とは
いえ、ズルはいかんよね。終盤のショートカットには唖然。そんなのが許されていいのかーと
ツッコミたくもなったけど、もしこれが許されるのであれば、多分同じ状況なら私もやってた
かも(笑)。まぁ、どっちにしろ、20キロもの距離を走り切るなんてヘタレの私には無理
ですが(苦笑)。

今回も奉太郎の省エネ精神は笑わせてもらいました。好きだな、こういう怠惰な考え(笑)。でも、
その割に、いつも思考が無駄に遠廻りしている気がしないでもないんだけど。省エネ精神ならば
もっとはっきりショートカットして、ずぱっと真相を推理すればいいのに、回り道回り道で、
遠くの所から考え始める。まぁ、無駄に見えて、それが無駄じゃないからいいんだけども。
今回のお話は、新入生獲得にちっとも意欲的でない古典部に、奇跡的に一人の新入生が仮入部してくる
ことが発端となっています。部員たちに上手く溶けこんでいると思えた彼女から、突然入部しないと
言われてしまう。奉太郎は、新入部員が入ろうが入るまいがどうでもいいのだけれど、その原因が
千反田さんにあると思われることから、重い腰を上げひと肌脱ぐことに。ここで積極的に原因を
突き止めようとすること自体が、奉太郎の省エネ精神からはずれている気がしないでもないのですが、
千反田さんの為に動こう頑張る姿勢がいいじゃないですか。千反田さんの影響なのか、もともと
基本的にお人好しなのか、その辺りは微妙なところですが(両方?)。

推理自体は地味ですが、細い伏線がきっちり効いていて、良く出来ていると思います。一人の
登場人物がぽろっと漏らした一言が重要な伏線になっていたりして、何度も感心させられました。
真相はかなり衝撃的な事実も隠されていますし。ページ数が短い割に奉太郎の推理思考が大部分を
占めている為、スローペースな印象の作品ですが、真相の苦さがこのシリーズらしいな、と思いました。
新入生の大日向さんはなかなかいいキャラなので、ラストの展開はちょっと残念でした。でも、一番
残念だったのは、前作で進展を見せたかに思えた奉太郎と千反田さんの関係かも・・・。出来れば、
途中で意味深に出て来る『遠まわりする雛』の後日談とも云える、奉太郎が熱を出したくだりをもっと
掘り下げて書いて欲しかった・・・個人的にはそこメインでもいいくらい(おい)。二人がその
事実をお互いに他の部員に隠しているところがなんだかね。ニヤ。二人の秘密の共有ってやつだね。

大日向さんが古典部に仮入部するきっかけになった、新入生勧誘期間の製菓研究会のコンロの謎
とか、大日向さんの従兄のお店の名前の謎とか、ちょこちょこと間に挟まれる小さい謎の推理も
小技が効いていて面白かった。でも、『レン』に漢字を当てるとしたら、私だったら正解の方を
思い浮かべるな。『恥ずかしい』っていうヒントがあったらだけど。惜しかったね、奉太郎。

薄いながら、笑える要素や細い推理が所々盛り込まれていて、楽しみどころの多い一冊でした。
タイトルの『ふたり』は複数考えられますね。もちろん、一番はあの二人でしょうけれど。
千反田さんとの距離は、まだまだ奉太郎には概算できかねるようです。今後の展開に期待
しましょう。

2010-07-20(Tue)

舞城王太郎/「獣の樹」/講談社ノベルス刊


舞城王太郎さんの「獣の樹」。

生まれた時から14歳だった僕を生んだのは、名無しのメス馬だった。めちゃくちゃな話だが
本当だ。僕が生まれたのを発見したのは、河原家の長男・正彦。歯磨きの途中で、窓の向こうの
庭に馬がいるのを見つけ、歯磨きを終えて近寄って見るとお腹が大きかった。そして、馬の
お腹の中から白い僕の手が飛び出て、正彦は思わず僕の手を引っ張った。そして、引っ張り
続けた挙句に出て来たのが背中に鬣のある14歳くらいの僕だった。最初、馬から生まれた
僕は、御之市にある湯引野児童園に引き取られることに決まりそうだったけれども、正彦の
強い希望もあって、結局河原家に引き取られることになった。僕は、福井に伝わる神話の風神
ナルオトヒコから正彦が思いついた成雄という名前をつけられ、河原家の次男として生きる
ことになる。ヒトとしての生活に慣れた頃、僕は蛇を操る楡という少女と出会う。この出会い
が、僕のヒトとしてのアイデンティティを変えて行く――講談社創業100周年記念出版書き下ろし
作品。


隣町図書館の『本日発売された本』コーナーにて発見。いやはや、またしても思わぬ行幸に恵まれ
ました。蛇足になりますが、私はいつも、二週間に一度通っている隣町図書館に行った場合、
見る棚(コーナー)の順番が大抵決まっています。まず始めに①返却カウンターで借りた本を返し、
それから②『本日発売の本』コーナーをチェックし、その裏側にある③『本日返却された本』
コーナー、その後で④一般書のあ~わの書棚を順番に見て、⑤YAコーナーを物色、⑥文庫棚
さらりと眺め、その裏にある⑦洋書文庫コーナー、そして時間があれば⑧単行本の洋書コーナー
の順で廻ります。先日、最初に②の『本日発売の本』コーナーを見た時、この本は置いてありませんでした。
でも、そこからいつものように一巡して、⑧まで見た後、なんとなくもう一度②を通り過ぎたところ、
さっき置いてなかったこの本が燦然と平台に輝いているではないですか。そう、私がいつもの如くに
のんびり借りる本を物色している間に入荷されていたのですね。もう一度通りかからなかったら
気付かず終わってました。なんたるラッキー。ほんとに発売日当日だったと思う。入荷前予約とかは
いなかったんですねぇ、多分。という訳で、いち早く買ったかのごとくに読める運びとなったのでした。
前置き長くてすみません(だって嬉しかったんだもん)。
隣町図書館って、こういうラッキーに度々出会えるから有り難い存在なのよね。

どうでもいい前置きはさておき、本書。前作『ビッチマグネット』に続き、『ディスコ探偵水曜日』
の読みにくさはどこに行った?と驚く程の読み易さ。ただ、設定自体は『ディスコ探偵』に匹敵
するくらいのぶっ飛びよう。なんせ、のっけから馬から14歳の少年が生まれて来るんですから。
しかも、鬣(たてがみ)つき。馬からなんで人間が!?っていう疑問は、読み進めて行くと一応
明らかにはなるのですが、それでもそれで納得が行くかというと・・・でも、なぜか舞城ワールド
に入ってしまうと、そこをツッコむ気になれなくなるから不思議だ。そっか、馬から人間が生まれる
こともあるかもしれないねー、うんうん、となぜか知らず納得してしまっている(されてしまって
いる?)自分がいるんだよね。それが舞城ワールドだから。ってことで納得できちゃう。主人公の
成雄が恋する楡の設定も相当にヘンテコ。蛇の口の中で生きているんだから。彼女がなぜ蛇の中に
いるのかも読み進めて行くとわかってくるし、その背景にはかなり悲惨な過去が隠されてもいるの
だけれど、普通に絵的に見て、蛇の口の中から女の子が出て来る図ってのは相当にシュール。
でも、なぜか蛇の中にいるこの少女と成雄との純愛が心に響くんだよね。途中、この楡のいる
湯引野児童園に隠された恐るべき事実が明らかにされる辺りから、物語が一気にキナ臭くなり、
スケールが大きくなりすぎて多少ついて行けないところがあったのだけれど、その中にあっても
成雄の楡への強い想いだけは終始ブレがない。楡の行動に疑心暗鬼になったりもするのだけれど、
最終的にはやっぱり楡が好きってところに落ち着くところが舞城さんらしい。今回も、テロリズムが
出て来たり、殺人が出て来たり、荒唐無稽な設定が次々と出て来ても、根底にあるのはやっぱり
愛でした。成雄のアイデンティティ確立ってのもテーマなのかもしれないけど、それよりは楡との
純愛の方が印象に残ったな。

正直中盤以降は何が何だかって部分も多かったのだけど、疾走感溢れる文章で最後までぐいぐいと
引っ張られて読了。舞城ワールドはやっぱり顕在でした。ただ、ラストは引っ張った割にはあれ?
ここで終わるの?って感じの唐突感がありましたが・・・でも、あれ以上更に引っ張られても
読むの辛かったかも^^;それでなくても、最後の方は日帰り旅行の帰りのバスの中で眠さとの
戦いの中での読書だったので・・・(しかも、集中しようとすると、横で姪っ子が邪魔をする
という、最悪の読書環境^^;←でも読む)。
うん、まぁ、面白かったから満足です。多少の消化不良は舞城作品では当たり前のことだしね。

ところで、主人公の成雄は、『山ん中の獅見朋成雄』に出て来た成雄とは関係があるのでしょうか。
ビジュアル(容姿)は同じなんだけど、設定がまるで違うから、パラレルワールドみたいな世界
ってことなのかな。『山ん中~』の内容全く覚えてないからおさらいしたくなりました。

この本の最終ページに今後の舞城作品の予定が載っているのですが、これからかなり派手に活動
なさるようですね。楽しみだけど、ついて行けるかなぁ・・・(アヤシイ)。越前魔太郎の方は
早々に諦めたからなぁ・・・(そもそもあれは舞城さんが書いてる訳じゃないらしいしね)。

2010-07-17(Sat)

越谷オサム/「空色メモリ」/東京創元社刊


越谷オサムさんの「空色メモリ」。

体重九十八キロ、ウエスト百十五センチ、まごう方なきデブのおれ。あだ名はそのままブーちゃん。
そんなおれは、部員でもないのに文芸部に入り浸り、文芸部唯一の部員のハカセこと河本博士と
つるんでいた。ハカセは、黒いセルフレームのメガネ、広い額に小さな目、無駄な豊富な知識を
持ちながら女性には免疫ゼロ、あだ名のハカセそのままの人物なのだ。そんな非モテ系男子二人が
たむろする文芸部部室にある日可愛らしい新入生部員がやってきた。入部希望らしいが、読書は
ほとんどライトノベル系のようなものしか読んで来ていないらしい。そんな文学にさほど興味の
なさそうな彼女が何故突然こんな辺鄙な部活に興味を持ったのか。どうやら、彼女には何か曰く
があるらしい・・・。おれはそんな文芸部での体験を、部室のパソコンで空色のUSBメモリに記録
し始めていた。しかし、このUSBメモリが思わぬ事態を引き起こし――爽やかな学園青春ミステリー。


読書メーターで絶賛されていて以前から読んでみたいと思っていた作品。越谷さんは『蝦蟇倉市
事件2』でドン引きさせられてちょっと読む気が失せていたのだけれど、お仲間ブロガーさんの
賞賛記事に背中を押されて、ようやく借りてみました。
多分、『蝦蟇倉市2』の一作が異色で、こちらの路線がこの人の本来のカラーなのだろうな。
メインに登場する高校生男子2名は、どちらもタイプの違う『非モテ系』。語り手の陸はデブ
の汗っかきだし、文芸部部長のハカセはチビでメガネ、知識だけは一人前でも女性に一切免疫
のない根暗少年。小説の主人公にするにはどちらもかなり地味。でも、これがかえってこの作品
では成功していると思う。モテない純情男子二人が、可愛い新入生の為にひと肌もふた肌も脱いで、
必死で頑張る姿に、なんだかこちらまで勇気をもらえるような気がしました。特に語り手の陸の
キャラが気に入りました。太っていることを自覚して、周りに極力迷惑がかからないように
デオドラントスプレーやハンカチは常に常備して、なんとか『デブな自分』と向きあおうとして
いる前向きさに好感が持てました。大抵こういうタイプはコンプレックスに対して卑屈に
なってしまいがちだと思うのですが。可愛い新入生部員の野村さんにぞっこん惚れ込んでしまった
ハカセの言動にちょこちょことツッコミを入れるところも笑えました。人のことならいくらでも
いろいろ云えるんだよねぇ。でも、陸自身も野村さんの友達のサキと話すと動揺したりして、
やっぱりおかしな言動を取ってしまったり。恋する男子の必死さが伝わって来て、すでに三十路を
超えた身には、かなり相当くすぐったく、なんとも甘酸っぱい気持ちになりました。青春だねぇ。

ミステリ的要素はほとんどないと言ってもいいと思いますが、一応陸のUSBメモリを盗んだ人間や
野村さんへの嫌がらせをしていた人間は誰か、という辺りで辛うじてミステリの体裁を取っている
感じでしょうか。ただ、その真実も驚くようなところは皆無で、その謎よりは、その先の犯人
と文芸部一味(?笑)との対決の方が読みどころとなっています。脅迫状の犯人だけはちょっと
驚かされましたが。実は、読み終えてからこの作品が東京創元社から出ていることに気付いて
意外に感じました。どっかのジュヴナイル系出版社とかかと思ってた^^;版元が東京創元に
してはミステリ色が薄いなぁというのが正直な感想です。
ただ、キャラやストーリーの面白さで十分その辺りは補って余りあるので、別に不満がある訳
ではありません。非モテ系高校生男子が女の子の為に奮闘する爽やかな学園青春小説として、
楽しく読める一冊でした。

ラストはとっても気になるところで終わっています。突然出て来た森本君に唖然。誰だよ!って
誰もがツッコミを入れたくなることでしょう・・・。そして、ラスト一行の後の、この先が知り
たいのにー!と思わせることで、作者の企みは成功していると云えるでしょうね。続編が出るとも
思えないけれど、もし出るとしたら当然タイトルは『桃色メモリ』でしょうね(笑)。陸やハカセ
だけではなく、イケメン新谷君やお調子者の北畠君といった脇を固めるキャラ達も個性的で
良かったので、個人的には是非続編書いて欲しいな、と思います。

ところで、野村さんがサキに借りた『虐殺がはじまるとき』のモデルは当然、山○悠介氏の
『リアル○ごっこ』でしょうねぇ・・・って、伏せ字の意味まるでなしですが(笑)。ここまで
公然とこきおろすとは、越谷さん、相当腹に据えかねていたのか、あの作品に(苦笑)。しかし、
勇気あるなぁ。『これなら私でも書ける!』と素人に思わせる小説とは、また痛烈で皮肉な言葉
だなぁと苦笑しちゃいました。

なかなか面白かったので、他の作品も読んでみようかな。私勘違いしてて、この方ってこのミス大賞
出身だと思い込んでいたのだけど、日本ファンタジーノベル大賞出身なのね。そっちの作品はどう
なのでしょうか。今度開架にあったら借りてみよう。

2010-07-16(Fri)

辻村深月/「光待つ場所へ」/講談社刊


辻村深月さんの「光待つ場所へ」。

T大学2年の清水あやめは、一般教養の『造詣表現』を履修する為に提出した自分の絵に自信を
持っていた。大学の桜並木、燃えるような赤い色で咲いている桜の間を通る道、絵の中央には
後ろ姿で立つ少女。『幸せの小道』というタイトルをつけた。予想通り、合格者の中にはあやめ
の名前があった。最初の授業で、教授は開口一番『今年の出品作はすごい』と言った。あやめは
当然自分の絵のことだと確信していた。だが、教授が興奮して紹介したのは、あやめが描いた
「幸せの小道」を映像に撮ったものだった。その映像はあやめを打ちのめした。絵に対して絶大
な自信を持っていたあやめは、その瞬間、人生で初めて敗北感を味わった。それが、田辺颯也
との出会いだった――(『しあわせのこみち』)。瑞々しい感性で描く三つの中編を収録。


辻村さんの新刊。今回も体裁はほぼ『ロードムービー』と一緒です。三作とも過去の辻村作品の
どれかと繋がっていて、スピンオフ的な作品集となっています。一応どのお話も単独でも楽しめる
とは思いますが、元ネタ作品を読んでいた方がより楽しめるのは言うまでもありません。相変わらず
辻村さんの書く女性心理は痛い。一作目のあやめも二作目のトーコも、自分と他人は違うとどこか
上から目線で物事を見ている節がある。実際あやめは絵の才能があるし、トーコも優れた容姿を
持つ美少女なのだからそれはそれで当たり前の感情なのかもしれないのですが。どちらのヒロイン
も、嫌悪を覚えるところは、どこか自分にも身に覚えがあるからってところもあるんですよね。
もちろん、自分にはない部分の方が多いけれども。心理描写が巧みすぎるというか、行き過ぎてる
せいか、ほんとに読んでいてちくちく突き刺さるんですよね、辻村さんの作品って。ああ、痛いなぁ、
こういう感情あるよなぁ、みたいな。でも、そのプライド振りかざして何になる?って反発心
を覚えたりもして。そんなにいろいろ考えないで、もっと単純に生きればいいのにって思ったり。
だから、一作目、二作目はなんだか純粋に作品が良かった、とか言い切れない自分がいる。痛々しい
女の子のお話で終わっちゃってるような気がなきにしもあらずだったり・・・。
そういう意味で、一番好きだったのはラストの『樹氷の街』でした。男子目線だし、純粋に彼らの
友情物語を素敵だと思えた。相変わらずイタイ女の子も出て来るけれど、彼女も最後には好感持て
たし。もちろん、好きな作品のスピンオフだったっていうのも大きい。彼には、こういう過去が
あったんだねぇ。彼には彼なりの、たくさんの葛藤を抱えていたのだということがわかって、
真から友達だと云える仲間が出来たことが本当に嬉しかったです。なんだかんだ文句つけつつ、
やっぱり辻村作品には最後に感動させられちゃうんだよね。巧いなぁ、やっぱり。でも、過去作品
のリンクは、ファンにとっては嬉しいけれど、やっぱり単独で読む人には不親切だよなぁと思う
ところもあります。ただ、リンクから離れた二作『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』『ふちなしのかがみ』
どちらもイマイチ好みからはずれてた訳で、私の辻村作品の好みはやっぱりリンク世界の中にある
のかな、と感じるところもあったり。うーん、難しいですね、この辺りは。リンクに拘って欲しい
と願う自分もいる反面、そこから離れた作品も書いて欲しいと思う自分もいる。ファンというのは
かくもワガママなものですね。


以下、各作品の短評。

『しあわせのこみち』
冷たい校舎の時は止まるのスピンオフ。田辺って出て来てたっけ?なんか、鷹野と深月は
覚えてるんだけど、その他の脇役キャラの名前とか全然覚えてなくて、こんな人いたっけ?と
思ってしまった^^;全編に亘って痛い独白が続くので、ちょっと途中で辟易したところも
ありました・・・。でも、ラストシーンは好き。相手の反応が気になります・・・。

『チハラトーコの物語』
スロウハイツの神様のスピンオフ。チハラトーコって誰だ?と思ったら、これはお初のキャラ
になるのかな?環が出て来て、やっと『あー、スロウハイツと繋がるのか』と気付きました。
チハラトーコの上から目線のキャラもちょっと鼻について好きじゃなかったけど、トーコと環の
関係の部分は良かったかな。

『樹氷の街』
凍りのくじら名前探しの放課後のスピンオフ。
合唱祭のピアノがここまで話題になることなんてあるのかなぁ。私が中学の時の合唱祭でも、
ピアノあんまり上手くない子が弾いたりしてるクラスもあったけど、あくまでピアノは伴奏だし、
そんなに重要視されてなかった覚えがあるんだけど。でも、クラス一丸となって合唱祭に向けて
練習する姿は学生らしくて清々しい。郁也と天木たちとの友情も良かったし、お手伝いの多恵
さんの存在が物語に優しさと温かさを加えていて良かった。郁也と多恵さんの関係も良かったな。
ベタだけど、ラストの多恵さんの郁也へのセリフにはほろり・・・。血の繋がりがなくても、
本当の祖母と孫のように、二人の間には確かな絆があるんだな、と感じられて嬉しかったです。
理帆子登場にもニヤリ。郁也の為なら帰って来るよね、そりゃ、どこにいてもね。




辻村さんのずるいところは、こういうスピンオフ作品を読むと、絶対に過去作品を読み返したく
なるところ。過去の作品を過去のものだと思わせない、それは辻村さんの作戦のひとつなのかも
しれない。だって、今、もう一度郁也や理帆子の物語を読み直したい気持ちでうずうずしてる
もの。リンクは、辻村さんなりの過去作品をもう一度読み返して欲しいというメッセージなのかも
しれないな。
プロフィール

べる

Author:べる
ヤフーブログ終了に伴い、過去記事保存の為開設しました。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR

Powered by FC2 Blog